カレの癒しは、時に厳しい。
柔らかく、ビロードのような滑らかな毛並み。
甘く、鈴の音色のような鳴き声。
香ばしく、ポップコーンのような、思わず口に含みたくなるような香り。
私を癒してくれる存在。
一緒に暮らしている、6歳の男の子。
愛猫のカリン。
……しかし。
私にとって癒しの存在であるカレに、かなり振り回されてもいる。
ふわふわな、柔らかな毛並みをブラシッングしてあげるとき。
「触るんじゃねぇ‼︎‼︎」
と、ものすごい勢いで噛みつかれることもある。ご機嫌斜めだったのかもしれないけれど、私の前でぐるぐる喉を鳴らしながらゴロンとお腹をみせて横たわってくれていたよね?
かわいらしい鳴き声も、時に厳しく響き渡る。
まだ、夜も開けない午前四時。
「ニャー、ニャー」
枕元で騒ぎ出すカレ。
どれほど無視をしても、カレは決して諦めない。私が起きるまで、ずうっと、鳴き続けている。疲れたりしないのか、ちょっと心配になるほどだ。私が深く眠っていて、鳴き声だけでは起きない時には、ペシペシと頭を叩かれる。もしくは、髪の毛に噛みついてくる。夏場で、布団から足が出ていようものなら、容赦なく噛みついてくる。甘噛みだけれど、痛いものは痛い。
朝の四時に、文字通り私は叩き起こされる。どうやらカレは新聞配達の音が気になったようで、目が覚めてしまうらしい。目が覚めればお腹が減る。お腹が減れば、ごはんを食べたい。ごはん係である人間(私)を起こそう。ということが、ほぼ毎朝繰り広げられている。
ちなみに、叩き起こされないときもある。その日は、決まって毛玉を吐き出している。毛玉を吐くときにはカポンカポンという、ポンプ音が大きく響き渡り、どちらにしても、目がさめる。そうして、いつも寝不足だ。
香ばしいポップコーンの香りは、実はあまり嗅がせてもらえやしない。カレのお腹に顔を埋めようとすると、あからさまに嫌がって、その場を立ち去る。カレを抱っこすると、明らかなる拒絶のポーズ、前足をグッと突っ張って、押しのけられてしまう。そんな時でも私は怯まずに、どうにかして肉球の匂いを嗅ごうと必死になるのだ。
嫌われているわけでは、決してないのだけれど。カレとの付き合いはとても難しい。
しかし、これからの季節は私にとって、とても嬉しいことがある。
寒くなるとカレは「ねぇ、入れてくれない?」と甘え、一緒に布団で眠ってくれるのだ。そっと布団をめくると、カレはいそいそと潜り込んできて、私の右腕と身体の間で丸くなる。
カレの柔らかく、温かい身体に触れて眠るとき。昼間にあった、ちょっとした嫌なことなんて忘れてしまうほどに、私は身も心も癒されている。