ひろこの睡眠学習帖

寝言のようなことばかり言っています。

ひねくれ者の、ひらめく力。

「私は多分、あの人と友達になれないな」

このドラマを見たときの、主人公に対しての率直な感想だ。

 

医療ドラマといわれるジャンルはたくさんある。最近では「わたし、失敗しないので」というセリフで有名な米倉涼子さん主演の「ドクターX」が人気だろうか。産婦人科での命のやり取りをていねい描いた、綾野剛さん主演の「コウノドリ」も話題になった。

海外ドラマでも、すばらしい作品がたくさんあって「ER」という、アメリカの救命救急センターを舞台にしたドラマが飛び抜けてすばらしい。命を救うこと。救えない命への葛藤。医師といえども人間で、登場する医師の悩みや、恋などもリアルに描かれている。

 

しかし、登場する医師が天才的であればあるほど、「ちょっと、この人、どうかしてる」率が高いように思う。今回おススメするのは「できればこの先生には関わりたくないな……」といろいろな意味で思わせられるドクターが主人公だ。

DR.HOUSE」というアメリカで2004年に制作され、シーズン8まで続いたドラマだ。

 

ハウスという医師は、診断医としてずば抜けている。他の病院では分からなかった病名を探り出し治療へと導いていく。そのひらめきは本当に天才的なのだ。病気とは、まったく関係のない、ふとした会話や部下が犯したミスをいびっているときなんかに、「……まてよ?」といった具合にアイデアが降りてくる。「ハウス先生に診てもらえば分かると思って」と、祈るような想いで病院にくる患者もいるほどなのだ。

 

しかし、このハウスという医師は一筋縄ではいかないほどの、ひねくれ者なのだ。診断医として雇われいるのに、仕事をサボろうとする。ハウスのサポートをしている医師たちのプライベートを詮索しては冷やかしたり、罵倒したりする。唯一(と言っても過言ではない)友人のことはダマし、嘘をついては利用する。患者を罵倒し、恐怖におびえさせることもある。「人は嘘をつく」というセリフも頻繁に口にしていて、患者の言葉を信用しない。そのため、患者の家に不法侵入のようなことをして、病気の原因を探るようなことも、しょっちゅう行っている。

 

黒に近いグレーともいえる、かなり犯罪スレスレな行為をおこないながらも、だれにも診断できなかった病名を探り当て、治療を導き出す。そのひらめきの道筋をたどるためなら手段を選ばない。ハウスは「自分自身の好奇心を満たすためにやってるんだ」と、ひねくれた笑顔を浮かべながら捨て台詞を吐く。けれど、その言葉すべてが本心ではなく、患者の命を救いたい、という根源的な想いも持っているのだ。そこがハウスの憎めないところであり、このドラマの魅力でもある。

登場人物はみな、「ハウスの言うこと、信じられない!」と、なんども怒ったり、失望したりするのだけれど、女性は少なからずハウスに惹かれていくし、男性もみな、どこかハウスを慕ってしまう。

このドラマをみるたびに、ハウスの破天荒ぶりがひどくて、「ちょっと、今回ハウスひどすぎない?」と思う。けれど「ハウスみたいに好き勝手言っていても、なにかしら能力に秀でたものがあれば、信頼されるものなのかな」とも思う。ただ単に、ひねくれ者ではない魅力があるからこそ、視聴者すらも惹きつけられるのだろうなと思う。

 

一話完結のストーリーなので、「このお話だけ見よう」という区切りもつけやすい。おもしろくなってしまって、ついつい次のお話も見たい! と思わずにはいられなくなるのだけれど。