ひろこの睡眠学習帖

寝言のようなことばかり言っています。

6年前の、今日のこと。

あれからもう6年も経つのかー、とコーヒーを入れながらボンヤリと考える。

 

6年前の12月8日に、私が今働いているカフェがオープンした。

 

もともと、デザイン事務所を営んでいた社長が、ずっと「やりたいこと」として思い描いていたのがカフェの営業だったそうだ。

私はカフェがオープンする、およそ半年くらい前に、小さなデザイン事務所の短期バイトとして、人づてに紹介されて、働いていた。

はじめは一ヶ月くらい、事務的な仕事を手伝ってほしい、という事だったのだけれど、なんとなく忙しい雰囲気に巻き込まれてしまった。

一ヶ月、と言われていたのが、いつのまにか週3くらいのバイト契約に変わっていった。

私の仕事は相変わらず、事務的にコツコツと進めていくタイプのものだった。けれど、いつのまにか社長は「人も増えたし、カフェをやろう!」という気持ちがむくむくと沸き起こっていたらしい。

物件探しやら何やらと、あれよあれよという間に、「カフェをやります!」ということになっていた。

 

いま、こうして思い出して書いていると「そんなバカげた話あるか!」と思う。けれど、本当に、あれ? 本気でやるつもり? と、どこか他人事として考えていたのに、いつの間にか「カフェでも働いてくれるよね?」という話になっていた。

 

物件を借りて、家賃が発生しているのだから、もうお店として始めたい! と、社長は言い出した。まだ、出すメニューも決まっていないにもかかわらず、だ。デザイン事務所のスタッフ(と、いってもデザイナーさんひとりだけ)と、私と、もうひとりいたアルバイトの人とで必死に止めたりもした。けれど、社長の意思は固かった。「フード類は決まってなくても、出すドリンクは決まっているから」と言って聞かず、オープンの日を決めてしまっていた。

 

そうして、フード類の試行錯誤やら、完全なる失敗作やら、色々なことを重ねながらも、ついにオープンの日が来てしまった。

 

小さな街の中にあるため、お客様が殺到するようなこともなかった。

ものすごく寒い日で、駅前とか、人通りの多い交差点のそばでチラシを配ったりしたけれど、それほどたくさんのお客様はいらっしゃらなくて、すこししょんぼりしたことを覚えている。

 

6年、という年月はあっという間だけれど、それでも色々なことがあった。カフェのオープンに向けて一緒に走り回ったデザイナーさんは何年か前に転職してしまった。一緒に事務のバイトをしていた人は今ではネイリストとして活躍していて、自分のお店をオープンしている。私はといえば、デザイン事務所のアルバイトから社員に昇格したものの、デザイン関連の仕事より、カフェの店員としてお店に立っている時間の方が確実にながい。

 

なんとなく巻き込まれて始めた仕事だった。けれど、カフェがオープンした日のことを知っているのは、今では社長と私しかいない。来店してくださるお客様ですら、引っ越しだったり、職場が変わったり、定年退職をされたりしていて、オープン当時から変わらずにずっと来てくださっているかたは、ほとんどいない。

だけど、毎日店に立って、「いらっしゃいませ」と言えるのは、ありがたいことだと思う。社長も私も、6年分年をとって、飲食店は肉体労働で、本当に大変だと身にしみて感じている。実際に、あと何年も続けていけるか、分からない。だけど、そうだとしても、お店に立っている間は、「ありがとうございました」と、笑顔でお客様をお見送りしたいと思っている。