読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ひろこの睡眠学習帖

寝言のようなことばかり言っています。

華道部という名の人生相談室

f:id:yuzukarin:20170420182749j:plain

今週のお題「部活動」

 

高校生の時。

私は友人に誘われて華道部に入ることになった。

 

その勧誘の仕方が、すでにいい加減だった。

「先輩が卒業して、今、私とMちゃんしかいなくて、やりたい放題やで!」

そんな誘い方あるかな? と思いながらも特にバイトもしていなかったので顔を出してみることにした。

 

華道部は、毎週水曜日の放課後に化学実験室で行われていた。

 

華道、というからにはお花か……。

文化系の部活なら、そんなに大変じゃないよね。

あんまりイメージも湧かないまま、ちらっと遊びに行くことに決める。

 

いざ、行ってみると、私の想像していた以上だった。

とってもゆるい空間だった。

 

華道の家元の 先生を外部から呼んでいて、

家庭科の先生や、保健室の先生、古典の先生なんかも一緒に指導を受けているにも関わらず。

 

家元の先生はかなり高齢だけれど愛らしく、いつも小綺麗な装いだった。

小柄な体格で、髪型も、いつもひとまとめに小さなおだんごを作って、品の良いかんざしをつけていた。

私たちは、その華道の先生を「もみじ」というあだ名で呼んでいた。(なぜそう呼んでいたかは、思い出せない)

 

もみじは、いつもウイットに富んでいて、

私たちの悩みはおろか、家庭科の先生なんかの悩みを聞いては、真剣に考えて、答えてくれていた。

 

「大学受験、どないしようかな〜。浪人したくないしなあ」

と、私たちがダベりながら悩んでいた時には

「受験なんて、人生の一部やでー。浪人なんて一年か二年やねんから、本当に行きたい大学なんやったら、親は説得したらいいねん」

「えー、もみじ、どうやって?」

「それは、みんなの親のタイプにもよるけどなあ。本気でやりたいっていうのをちゃんと言わなあかんで」

「じゃあ、別にやりたいことは、見つかってへんねんけど、その場合は?」

「やりたいことなんか、その時々でイロイロやんか。大学行けるんやったら、そこで見つけたらいいねん。二年か四年もあるんやから、チャンスやんか」

「そこで見つからんかったら……?」

「その時はその時。やりたいことなんて、これ! って見つからへん人の方が多いんやから。自分は何が好きか、考えていったらいいだけやでー」

 

もみじはいつも、そんな調子だった。

ある時なんて、友人が「妊娠したかも……」なんていう、爆弾発言をした。

保健室の先生は、

「ちょっとちょっと、そんな大事なこと……!」

と、あわてていたけれど。

もみじは、あっけらかんと

「高校生なんて、やりたい盛りよ!」と笑っていた。けれど、こう続けた。

「そういうとき、どうしても女性側に負担が強いからね。事実を確認して、もしも、の時は知恵を貸しますから。どうするにしてもな。あ、お金はあかんよ。男に出させなあかん」

と、マジメな表情で話してくれた。

 

幸い、その友人の早とちりで妊娠はしていなかった。

けれど、高校生の時に、部活と言いながらもいろいろな悩みを真剣に聞いてくれる先生がいたことは、とてもありがたかった。

もみじは笑うと、しわくちゃの笑顔だった。けれど、顔にきざまれているしわは、もみじのこれまでの人生を表すかのようだった。

目尻の笑いじわも、

時々ギュッと寄る、眉間の縦じわも。

 

そんな風におしゃべりばかりしていたので、肝心の華道については、何にも身には付かなかったのだけれど。